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ASCA 30th記念 パートナー座談会 Part1

この30年間で翻訳のプロセスは大きく変わりました。ASCAでCAT Toolを導入した当初(約15年前)は、ほとんどの方が「使いにくい」とおっしゃっていましたが、バージョンアップした医薬特化型MTを搭載した現在では、「使いたい」という方が、「使いたくない」という方の数を上回るようになりました。今回は実際に日々業務に携わってくださる皆さまから、翻訳プロセスの変化についてお話を伺います。


参加者:
パートナー:柏木さん、川合さん、三枝さん、中西さん、畠山さん、花渕さん、持田さん
ASCA:平尾(開発担当)、深野(Project Manager)、加藤(Project Coordinator)、小野(司会)

記事内で出てくる用語一覧


「CAT Tool+MT」の活用による翻訳プロセス

-翻訳プロセスが、「WordやExcelベースでの翻訳」→「CAT Tool(+TM+TB)による翻訳」→「CAT Tool(+TM+TB)+MTを用いた翻訳」に変化してきていますが、この変化をどのように感じていますか?

持田(以下、敬称略)
ASCAにチェッカーとして登録した当初は出社していたのですが、まず日英両方の原稿を計100枚くらいA4印刷してから、チェックを開始していました。このWordベースで紙に印刷するやり方だと、もしも見落としがあったとしても「もっと集中します」「次がんばります」くらいしか言いようがないのですが、CAT ToolだとQA機能やソート機能などいろんな方法を駆使しながら、チェックができるという点が大きな変化だと思います。

花渕
Wordベースでチェックしているときは、数値のチェックが本当に大変でした。表内の数値などはCAT Toolだと横に並んでいて見やすいですし、QA機能も使えるのでかなり効率化されています。

柏木
Wordベースのチェックでは、1文1文確認したことがわかるように、しるしをつけていたのですが、どうしても見落としてしまうことがあります。CAT Toolだとセグメントで区切られているので、とりあえず大きく抜けることはないという安心感があります。ただ、最後に翻訳ファイルを生成して全体のレイアウトを整えるのですが、この修正に時間がかかるときがあります。最近では、CAT Toolでチェックをする際に同時に原文ファイルを横に開いておいて、自分が今どこを見ているかを確認しながら進めるようにしています。

三枝
わたしは皆さんに比べると経験が浅いのですが、CAT ToolではTMを検索するとよくヒットしてくる用語・表現などがわかるので、参考資料でどの語句に注目すればよいか、気を付けるべきポイントは何かなどがわかりやすいと感じています。Wordベースのときは文書全体を全力で見ないといけなかったので、重要なポイントに気づくことが難しく、ある特定の部分に意識が集中してしまうこともあり、全体を俯瞰することができないと感じていました。

平尾
確かにWordベースのチェックをしていた頃は、気になる用語を書き留めてExcelやメモ帳に記入して、最後にそれを1個1個検索して確認するということをしていました。でも書き留めるのをつい忘れたり、原文のバリエーションが多くて書ききれなかったりして、苦労したことを覚えています。

-ここまでチェック担当者の方々のお話を聞いてきましたが、翻訳担当者として中西さんからのご意見をお伺いします。

中西
Wordベースで翻訳していた頃は、翻訳対象ファイル、参考資料ファイル(2~3種類)、また改訂翻訳の場合は前版ファイルを、それぞれ日英版Word(又はPDF)で開くので、全部で8ファイルくらい開いて作業しないといけなくて本当に大変でした。さらに、検索するためのWebブラウザも開きますし、変更履歴付きで翻訳しているとPCが重くなってWordが固まることもよくありました。今のCAT Toolを使った翻訳は非常に便利で、ミス・訳抜けを減らせますし、用語検索もできるので統一も簡単です。わたしがよく担当するA社の案件では、A社向けにカスタマイズしたMTを使ってプロジェクトを作ってもらっているのですが、A社特有の表現がそのままMTで出力されるので、この点もとても使いやすいと感じています。

-カスタマイズMTのお話がでましたが、ここでPMの深野から実例を紹介してもらいます。

深野
実例としてご紹介するのは新規のプロトコル1本のケースです。下の表をご参照ください。

CAT Toolを使うこと、さらにカスタマイズエンジンを加えることで、全体の納期はどんどん短縮されています。カスタマイズエンジンは半年に1回チューニングすることで、情報をアップデートしています。お客様レビュー後のファイルを指示に従って修正する「修正対応」という工程があるのですが、その対応をチェッカーさんや翻訳者さんにお願いしています。チェッカーさんや翻訳者さんには、この修正対応の際に気づいたことをPMに報告してもらい、これらのご意見をお客様にも共有・確認してもらったうえで、カスタマイズエンジンを含めたシステムに反映しています。翻訳環境を改善していくことで、さらに大幅に納期を短縮することを目標にしています。

花渕
わたしが担当する案件では、類似試験の類似文書をPMさんがTMにつけてくれています。ですので、それらに用語や表現を合わせた形で納品しているのですが、修正対応時に、お客様がそれぞれの文書(案件単位)によって、異なる修正をされることがあります。

持田
A社の仕事では、「前処理」という工程を入れているのですが、部門によって用語が違う場合やMT訳がTMと一致しない場合など、この「前処理」の工程であらかじめ統一すべき用語をTBに登録してから、次の「翻訳」の工程に進めています。

中西
事前に用語を登録してくれているので迷うことなく選択できますし、翻訳者としては、それ以外に必要な調査に時間をかけることができます。

花渕
前版でFIXしている用語でも時がたてば変わることは当然あるので、修正対応をした時点でそれらの情報をためておいて、次のエンジンの学習に利用する、という流れは大事だなと思います。今月は、ちょうど担当する案件で情報共有会があるので、最近どのようになっているか聞いてみます。


まとめ

CAT Toolは用語検索やQA機能がとても有用であるという一方で、クライアントの希望納期がどんどん厳しくなっているという課題もあがりました。次回は、CAT Toolをどのように活用しているかについて、さらに詳しくお話しいただきます。

Part2の記事はこちらから

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