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AI活用、仕上げるのはあくまで翻訳者

医薬以外の分野にも幅広く対応いただけるASCAの人気翻訳者さんに、翻訳祭について、また日ごろの業務についてお伺いしました。


Q: 翻訳祭に参加されていかがでしたか。

 A: 翻訳祭には初めて参加しました。memoQのスポンサーセッションに参加したのですが、いろいろと便利な機能について説明があり、特にAGT*という新しいサービスは、今まで人手でやっていた作業をAIがやってくれるということで、もちろん精度の確認は必要ですが、ぜひ使ってみたいと感じました。

*https://www.memoq.com/ja/integrations/memoq-agt

memoQ Day Tokyo 2024参加リポート|ASCA Bulletin|アスカコーポレーション

Q: ASCAの講演でもAIについてお話しさせていただきましたが、翻訳にAIを取り入れることについてはどのようにお考えですか?

A: 翻訳者の立ち位置や考え方次第ではないでしょうか。例えば私たち医薬業界などスピードが求められる世界ではAIはとても便利なものですし、効率を上げて量をこなしていくためには、なるべく人間の作業を減らす必要があり、AIは使用すべきだと思います。

一方で、AIを活用していくためには、AIの適否を判断する能力をきちんと持たなければなりません。AIの役割が何なのか、翻訳者の役割が何なのかを明確にする必要があると思います。翻訳者がAIを信じ込んでAIに合わせてしまったら元も子もありません。作業のどの部分にAIが使えるのか、AIのどこが正しく、どこが誤っているのかを見極めて、仕上げるのはあくまで翻訳者であるという意識を持つべきだと思っています。

Q: 普段の案件ではMTやCATツールを活用いただく機会が多いと思いますが、MTやCATツールについて感じているメリット、デメリットを教えてください。

A: 現在対応している案件ではCATツールの使用を求められることが多いですが、CATツールは本来翻訳作業の効率化を目的としているにもかかわらず、それが使いこなせないためにかえって時間がかかってしまうことがあります。例えば、QAをかけたときに大量のfalse positiveが発生して、それをつぶすのに時間を要したり、false positiveが多い影響で本当のエラーを見落としてしまったりすることがあります。もちろんQA設定を最適化すれば解決できるかもしれませんが、その最適化方法を今ひとつ理解できていないということがあります。CATツールを使いこなさなければならないのは翻訳者ですが、使いこなすための情報発信などがあればとても助かります。

また、ある案件では、CATツールで作業するにもかかわらず、参考資料がTMなどとして提供されないというケースがあり、実際に参考資料に合わせきれずにクライアントから指摘を受けたことがあります。参考資料は、TMやTBあるいはライブ文書としてCATツールに組み込むと参照がしやすくなると思うのですが、参考資料についてだけWordを目視確認しなければならないとなると、結局そこに余分な時間が割かれてしまいますし、人力で検索するには限界もあります。そうなると、納期は短い、人手作業は増える、ミスは追及される、という状況になり、翻訳者としては大変苦しいと感じます。CATツールのメリットを最大限に活用し、人手で行う作業を最小限にする環境を作っていただけたら有難いと感じます。

Q: ASCAの品質管理部に期待することはありますか。

 A: どんな案件でも、求められる品質がより明確化されていると翻訳者も作業しやすいのではないかと思います。例えば、訳語については文書内の一貫性を優先するのか、それとも過去の文書との一貫性が重視されるのか、といったことです。また、エラーが発生した場合に、翻訳者1人1人に対策を求めるのももちろんですが、たとえ短納期だとしても今までと同等の品質が求められるので、限られた時間の中でエラーを最小限にするためにどのようなプロセスをしくのか、翻訳会社としての役割を明確にしていただけたら心強いと感じます。


 AIやCATツールの活用方法、求められる品質の明確化、どれも翻訳の品質を考えるうえで大変重要な要素だと思います。貴重なご意見を受け、これからも品質向上に取り組んでいきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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