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「MTユーザーガイド~機械翻訳で失敗しないための手引き」完成!

アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)のMTユーザーガイド委員会から、「MTユーザーガイド~機械翻訳で失敗しないための手引き」が発行された。

AI技術が発達したことにより、機械翻訳(MT)が身近に利用できるようになったことで、外国語を理解したり、外国語で情報発信したりできるようになった。しかしながら「MTには落とし穴があります」と書は始まっている。

MT翻訳は完ぺきではなく、思わぬ誤訳や訳抜けを起こす。そのため、自治体の情報発信に使われ、社会問題に発展することもあるが、これはMTの技術的力不足による問題ではなく、MTを使う側の問題である、と書かれていてほっとする。

MTを正しく使い、外国語でのコミュニケーションで失敗しないためのMTリテラシーを提供するのがこの書の目的である。

技術的な情報だけでなく、翻訳の品質やプロセス、法律に至るまでとても丁寧に説明されていて、制作された委員の皆様の尽力に心から頭が下がる。

PE(ポストエディット)にも言及されており、素人がPEを行うことは危険であり、翻訳者の能力が必要であることも書かれている。実際にはMT訳の間違いを修正するのは大変で、余計に時間がかかってしまうこともある、とも。なので、MT訳に引きずられない高い能力が必要である。

私はかねがね、PEが人間による翻訳より"安い"という市場のトレンドには反対で、むしろ人による翻訳より高い能力が求められる側面もあるので、納期が短い分、"高い"のが妥当だと考えている。人間の翻訳では特急料金が加算されるのに、PEには適用されていないのはおかしくないだろうか?

もちろん、用語統一や、参考訳との照合、スタイルの一致などが不要だと判断される場合には、人間による翻訳でも同様であるが、安く設定することは可能である。

MTが普及したことで、翻訳者の収入が減る、という考え方にも合点がいかない。単価が同じなら、スピードが上がり、対応量が増えるなら収入も増えるはずである。翻訳者にとって使わない手はない。

翻訳会社には、MTエンジンの開発やメンテナンス、ライセンスを利用料、利用に伴う教育費などがかさむ。この費用は今翻訳会社の持ち出しである一方、翻訳者の方にはしっかり活用してほしいと願っているし、クライアントの方には納期短縮を新薬開発のスピード化に生かしてもらえたら本望である。

一日でも早く患者さんに薬を届けるために、私たちの企業努力を成果につなげたい。

このガイドには、MTの誤訳の問題はだれの責任か、翻訳会社がMTを勝手に使っていいのか、コーパスを学習として使うことにどのような問題が生じるのか、など、知っておきたい情報がわかりやすく紹介されている。

是非読んで、リテラシーを上げることで業務の効率化にMTを活用してほしいと願う。

ガイドはこちらから。