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同時通訳が出来るのはなぜ?ワーキングメモリには限界あり

12月1日放映の「チコちゃんに叱られる」で、“なぜ同時通訳ができる?”という質問に対して、立教大学異文化コミュニケーション学部教授の山田優先生がわかりやすく解説くださった。

同時通訳ってなんでできるの?
チコちゃんの答えは、「頭の中に入って来た情報をあっという間に消しちゃうから」。
山田先生は、同時通訳時、脳に入ってきた情報を一時的に記憶しておくワーキングメモリがあるのだが、一時的に情報を置いておくスペースは一般的に4つほどといわれていて、なので同時通訳が出来るワーキングメモリは4つが限界で、それ以上は一度に記憶しておくことが難しいとされているのだと。

そもそも記憶力は能力だと思っていたが、そうではない?
同時通訳者であっても普通の人と変わらない容量で、スペースを増やすトレーニングなどやってはいないらしい。

文法の違いで、最後まできっちり文章を聞いて吟味してからではないと正確には訳せないのだとしたらすぐにワーキングメモリがいっぱいになって、英語に追いつかなくなって同時通訳はできない。なので、ワーキングメモリがいっぱいなる前にとりあえず聞き取った範囲の英語を訳してさっさと忘れるという作業を同時通訳者は無意識に行っていることに。

英語力が上達すればするほど長い文章を一気に理解する事ができるのだと。また、通訳者のレベルが上がると内容を映像化する技術を身につけている?長い文章を一つの映像として処理する事ができればワーキングメモリのスペースをさらに節約するとも。同時通訳者の集中力は想像以上だ。
詳しくは、

40年ほど前、私が初めて同時通訳のブースの様子を見た時に驚いた。通訳者は、資料でもらった原稿を終わるやいなや投げ捨てているのである。終わったときには部屋は紙の山である。苦労して集めた資料なのに、と思ったりもしたが、その集中力に感動した。
会議が終わったら、次の仕事の準備に入っていて、さっきまでの仕事の内容はすっかり忘れているのだから驚いた。忘れないと次の情報が入らない、ときっぱり。

翻訳も実はそうである。私が一緒に会社を始めた翻訳者の田村は、新しい仕事のために本一冊を読み、翻訳をしたら翻訳の中身は忘れるのだそう。確かに優秀な翻訳者は、そういえばそんな仕事もあった、程度である。もちろんリピートで対応すると、思い出すのも早いので効率はいいはずであるが。
通訳者、翻訳者とも、プロの職人技は、次の情報を入れるために“忘れる”のである。

私は、人の名前を思い出さないのは歳のせい、と思っていたが、どうもそうではない。メモリがいっぱいなのである。歳を重ねると、古い人や記憶を捨てられなくなっていくから新しい人や記憶が入らないのである。記憶の断捨離ができない?
覚えたくない言い訳かもしれない。
ただ、つまらないこともしつこく覚えているので、それはそれで皆には迷惑なのかも、と。

(文:石岡映子)


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