見出し画像

パートナーの声:西村さん

翻訳者になられたきっかけを教えてください。

農学部を卒業したあと、食品会社の研究所に勤めながら、翻訳学校に通っていました。それがちょうどASCAの立ち上げの頃で、講師だった田村さんに声をかけていただきました。

西村さんが翻訳したものを見ていると、常に読み手を意識していらっしゃることが文書から伝わってきます。

実務翻訳なので、表現に凝る必要はないということはわかっているのですが、翻訳学校時代は一文にこだわって、お風呂の中で考えたり、1日寝かせたりしていました。他の人も同じだと思いますが、1つの専門用語を翻訳するのに、図書館に行って文献を調べました。一時期自分なりに、クライアントごとの辞書を作ろうとしたこともありますが、長い開発期間の中で一本化されていく用語もあれば、変化していくものもあって、難しいですね。その中で、クライアントやASCAさんが作成していただいた用語集などの参考資料は非常にありがたいです。過去にないほど情報処理のスピードが求められる時代ですが、内容をじっくりと考える、エンドユーザーに向けてわかりやすく書く、という姿勢はできるだけ忘れないようにしたいと思っています。

品質もスピードも両方兼ね備えていらっしゃいますが、家庭との両立ってどうされていますか。

在宅でできるのが強みですね。表現が特に難しい箇所など、料理や買い物の行き帰りも訳語を練りながら、思いついたらPCの前に座るということもあります。逆に、英日翻訳の英語の文書内に誤りがあって、たとえば文章と表内の数値が合っていないとか、動詞がないとかで解釈不能、そういうときは、気晴らしのために少しPCから離れて、家のことをします。

印象に残っているお仕事はありますか。

最初のころ、定期的に論文のアブストラクトを翻訳する仕事をしていて、新しい知識に触れて、知的好奇心が満たされる機会が多くありました。それがないとこの仕事は続けられないので、また論文翻訳があればぜひ依頼してほしいです。
他には、日本人特有の謝罪文の翻訳をしたときです。文字通り訳したらネイティブに「こんなに何度もapologizeしない!」と指摘されてしまい、簡潔にして納品したら、クライアントに「何度も、あっちでもこっちでも謝る文章にしてほしい」と言われました。やはり、文化の違いは難しいなと思った出来事です。
つい最近のことですが、以前だったら絶対に使わない表現、たとえば、「ある患者にある副作用が発現する」と表現する際に、患者を主語に動詞developが文書全体にわたって使われていました。この動詞は病気を主語にする場合しか使ってはいけないと習ったのですが、今はネイティブが見てもOKなのでしょうか。また、以前は日本語に訳していたものがカタカナでの使用が標準になっていることも多くあります。言葉はコミュニケーションの道具だから、どんどん変化していいものだとは思いますが、基本には忠実に、そして常に新しい情報にもアンテナを張っていければいいなと思います。

今後の希望や目標は?

朝起きた時に「今日締め切りあったっけ?」をもう30年やっているので、1回辞めてみたいと思うこともたまにありますが、基本的には翻訳を生涯の仕事としていきたいと思っています。コロナ下で翻訳の講師の仕事が減る中、人と話すことでインスピレーションももらえますし、表現法の勉強にもなるため、他の言語の勉強も始めています。フランス語でシャンソンを歌ったりもして楽しいです。

ASCAや石岡さんへの要望・メッセージをお願いします。

ASCAは機械翻訳を早い段階で取り入れていて、医薬に特化したのもいいですよね。なんでも屋になっていたら、ここまで来ることはできなかったと思います。東京に支店を開設することになるとは思いもしなかったですが、石岡さんはあれだけパワフルな人だから、当然の流れだったのかもしれません。スウェーデンにいるときに、「時差のおかげで、西村さんに頼んだら、こっちが目覚める頃に翻訳できあがってるからいいわ~!」と元気に言われて、つくづくすごい人だと思いました。とにかく、お話しているだけでこちらも元気がもらえるバイタリティに溢れた方です。

残念に思うことは、昔はクライアントと翻訳者の距離が近く、意思疎通が直接的にできていたのに、最近はそうではないことです。翻訳者の中には、翻訳が終わったらあとは翻訳会社に任せます、という考えの人もいるようですが、クライアントと翻訳会社のスタッフ、翻訳者など皆でひとつのものを一緒に作り上げるという発想を持てるような関係が良いと、わたしは思っています。
言葉を仕事にしていますし、関わるみんながコミュニケーションを大事にする意識を持つようにしたいです。自動でできるところは機械に任せてスピードアップさせて、その代わりコミュニ―ケーションをとったり、人が考える部分に時間を使いましょう、という考え方で仕事ができたら理想だなと思います。

ASCAは一緒に成長できるパートナーの方を募集します。
医学・医薬分野における翻訳・ライティング市場において、医学研究の進歩に伴う専門性の高度化への対応と、グローバル化に伴うスピードアップが求められています。ライフサイエンス分野におけるTotal Solution Provider No.1を目指すASCAのビジョンを達成するために、ASCAとともに成長していける方を求めます。

30周年サイトに戻る