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AIは組み合わせて、使い方を工夫

論文や非臨床分野を中心に活躍されているベテラン翻訳者の飯田さんに、今回の翻訳祭の感想や、これからの仕事についてお話を伺います。


 Q: 翻訳祭に参加されていかがでしたか?

A: 翻訳祭に参加するのは5、6年ぶりなのですが、コロナ前に参加したときは実地開催だったため、翻訳者をはじめとする人との出会いが多くありました。今回はオンデマンドがメインになっていたため心配はありましたが、思っていたより会場での参加者が多く、金沢という遠い場所にもかかわらず、何人かとお知り合いになれて良かったです。

 Q: 今回、弊社佐藤と関西大学 阪本先生とのセッション「AIと翻訳の融合:翻訳者に期待する新たな挑戦と機会」がありましたが、内容についてはいかがでしたか。

A:すでに知っている内容もありましたが、会場の雰囲気からASCAさんは翻訳者を大切にしてくれている会社だという印象を受けました。MTはあくまで作業を効率化するための参考資料のひとつであり、ポストエディット(PE)にも従来と同じ品質レベルが求められることから、PE=翻訳であるという方針には共感しました。PEは人手翻訳とは別物と考え、納期や料金を設定される会社さんが多い中でユニークな試みだと思います。効率が上がり、翻訳者が引き受けられる量が増えるという面ではwin-winの関係だと思うので、こういった方針でお仕事を依頼してくださるのは嬉しいです。

真っ白な状態から自分で文章を作るのとは違い、PEでは間違いがあるかもしれない文章の間違いをまず探す工程と修正してちゃんとした日本語にする工程があるので、苦しい作業でもあります。ですが、機械翻訳の結果が参考資料として提供されるなら、用語調べにも役立ちますし、非常に有効です。

阪本先生の研究の発表では、日本だけではなく海外でも同様に、PEは単価が下がり苦しい思いをしているというお話があり、どこの国でも翻訳者が同じことを感じているのだなと実感しました。

Q: 参考資料としてMTを活用することについてどう思いますか。

A: MTを参考資料として使うことは非常に役立つと思います。ASCAさんのMTの結果は非常に精度が高く、参考資料として非常に有用です。専門知識があればスラスラと翻訳できるかもしれませんが、私の場合は参考になる文章があると非常に助かります。

Q: ポストエディット(PE)の仕事についてどう思いますか。

A: PEは、使う脳が翻訳と違って非常に疲れる作業です。井口さんのセッションでも触れられたように、翻訳の仕事が減少し、MTPEが主流になる中で、翻訳にこだわっていると収入が減る可能性があります。大きな挑戦ではありますが、できれば翻訳を中心にしたいと思います。

Q: 他に印象に残ったセッションはありますか。

A: 九段さんの話が非常に面白かったです。日本語の使い方に非常にセンサーのある方で、筋トレを毎日していると忘れた頃に効果が出ると信じている、という話が印象的でした。ASCAさんのMTの性能評価を5、6年前に行った際は、文章がボロボロでMTは全然使えないと感じましたが、今は精度が上がって、医薬にも特化しているので、非常に使いやすいと感じます。以前からコツコツしてきたことが、忘れた頃に出てくるというのを、ASCAさんの仕事を通して共感しました。

Q: AIやMTの活用についてどう思いますか。

A: メディカルライティングの講座で、Chat GPTを使って文章をブラッシュアップすると素敵な英文になるという話を聞きました。MTよりもChat GPTの方が難しい表現を助けてくれるかもしれません。別の講座でも、「今のAIはすごく使いやすい。必ず正しい答えは出ないけど、日本人の英語がすごく良くなっている」という話がありました。AIは使い方を工夫すれば論文作成にも活用できると思います。

また、翻訳ミニコンテストの課題に取り組む際、実際にChat GPTを試してみたのですが、組み合わせて使うことで効果を感じました。英語を入力して日本語を出力するのもChat GPTなら簡単にできるため、日常的なものなら特に使いやすいと思います。

 Q: 参加者の方と、どのような交流がありましたか。

A: 交流パーティーには初めて出席したのですが、たまたま隣に居合わせた方が翻訳検定一級で表彰される方で、お話するチャンスがあり、一級合格のコツについて質問することができたのですが、過去問を解くことが重要で、必ず全文回答することが大切だと学ぶことができました。他の一級合格者の方ともネットワークが広がりました。

 Q: ASCAの品質管理部に期待することはありますか。

A: 翻訳者のスケジュール管理には気を配っていただけると有難いです。お仕事の打診をいただいた際は、その時点で日程を確保するようにしています。ですので、そのお仕事の正式な決定について速やかにご連絡いただけると、次の依頼を受けるかどうか判断できるため有難いです。私自身も、対応可能/不可能な日程や対応可能量などを明確にお伝えすることでスムーズにご依頼いただけるようにできればと思います。


翻訳祭では普段なかなか触れるチャンスのない様々な意見や情報に触れ、ネットワークも広がったようで良かったです。スケジュール管理は、翻訳者の皆様が時間を有効に使ううえでとても大事な翻訳会社の役割だと思いますので、注意していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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