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機械翻訳で翻訳業務を進化させる:中外製薬株式会社様

中外製薬株式会社様は、2020年に「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を発表され、全社的にデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する先進的な取り組みをされています。特に翻訳業務ではいち早くカスタマイズエンジンを導入し、弊社と共に新技術の活用に積極的に取り組まれています。 

本日は、信頼性保証企画部 翻訳マネジメントグループ(TMG)の齋藤様に、会社全体のDXに対する取り組み内容や、機械翻訳の導入とその効果についてお話をお伺いします(組織名称、職位等は取材当時のもの)。



中外製薬株式会社様におけるDXの取り組みについて

まずは、御社におけるDXに対する取り組みについて教えていただけますか。

中外製薬株式会社の目指す姿は、「患者さん中心の高度で持続可能な医療を実現する」ということです。この目標に向かって事業活動を通じて中外製薬にしかできないイノベーションを創出しています。そのキードライバーのひとつがDXであり、会社としても強く明確なメッセージを打ち出しています。デジタル基盤を強化し、新薬創出から、翻訳も含めた後方支援的な企業活動もデジタルを使って効率化していくということです。 

この目標を達成するために、社員1人ひとりにDXに対する意識を持たせ、ボトムアップでDX活用を推進できる組織文化や仕組み作りを全社的に行っています。その取り組みのひとつがデジタルイノベーションラボ(DIL)です。DILでは、まず全社員からデジタルを活用したアイデアを募ります。そして審査を経て採用されたアイデアについて、外部のサポート等を得ながら実現に向けて具体的に取り組んでいきます。また、デジタル人財育成のためにCHUGAI DIGITAL ACADEMY(CDA)を立ち上げ、「データサイエンス」、「デジタルプロジェクトマネジメント」に関する教育研修を行っています。この研修は9ヵ月間のコースで、日常業務と並行して行っています。

中外製薬株式会社 信頼性保証企画部 齋藤 敦 様

またDX推進に向けて「デジタルトランスフォーメーションユニット(DXユニット)」という部門を新設すると共に、各部門・各機能にもDXをリードするスタッフをおいて、各部門が主体的にDXを推進できるような体制をとっています。

デジタル化について、外部のベンダーおよび教育機関などとどのように協働されているか教えていただけますか。また医薬品開発とITという異なる文化の融合についてのお考えをお聞かせください。

CDAも、外部のコンサルタントの協力を得て教育プログラムを作成しました。新しいDXユニットのトップには、実際にIT業界の方を招聘して組織作りから関わっていただきましたし、実務面ではIT系のエキスパートを中途・新卒採用しています。DXユニットに所属する社員のかなりの割合がITバックグラウンドのあるスタッフです。昔とは様変わりしましたね。 

医薬品は患者さんに安全に使用していただくことは絶対に譲れません。そのためには、研究・開発・試験を1つひとつ確実に検証を重ねていくべきものです。一方でITの世界には、ベータ版でもプロトタイプでもいいのでとりあえず使ってみて改善していく、という考え方があると伺っております。ただそこは、医薬品の専門家とITの専門家が互いの強みをうまく融合させることができれば理想的ですし、今後「患者さんのために」という目的に立ち返りながら、新しい価値創出に繋がる協力ができるようになればと思っています。

TMG内でのDXの取り組みについて

TMG様では、翻訳業務に関連してどのようなDX推進の目標設定や取り組みを行っていますか。また、現時点でどのような成果や課題がありますか。

TMGとして掲げている目標は、「品質は保ったまま、これまでよりも効率的に、つまり短い時間と少ないリソースで成果を出す」ということです。翻訳の部分は御社を始めとした翻訳会社様にお願いしているわけですが、TMGとしては、コーディネーション業務の生産性をあげていきたいと思っていて、短中期的には、使っているリソース(要員や時間など)の50%削減を目標にしています。ひとつには翻訳管理システムの導入、またこれと並行して、Power Automate等の利用により、人手で行っている業務を自動化・迅速化できないかと思案中であり、一部実装したものもあります。
業務効率化をモニタリングする目的で、それぞれの業務にかかった時間を毎日記録していますが、そのデータを見ると少しずつ成果として現れています。 

御社との機械翻訳に対する取り組みについては、「治験実施計画書」では納期や品質など数字で現れるものについて一定の評価が得られています。また「非要求事項」を検討することで、レビューの目線合わせ、つまり公式文書として整えるためにどこまでレビュー修正が必要なのかということについて再考する良いきっかけになりました。

効果を測定し、それを可視化すること、さらにそれが継続的に行われていることが大変素晴らしいと思います。TMG様として、他部署様との連携や情報共有などでお感じになっていることはありますか。

アスカコーポレーション 開発部 早川 威士

この機械翻訳に対する取り組みは、TMGとしても社内では一日の長があると思っていますので、翻訳業務を進化させるために、全社的にそのノウハウを情報共有したり、発信したりしていくという役割を果たしていかなければならない、と考えています。 

また先ほど「非要求事項」の話をしましたが、依頼部門、とくに翻訳が多く発生する部門と翻訳品質に関する意見交換を行う、という試みに最近着手しました。最終目標に向かって、「現実的にどうすれば最適化できるか」について話をしていきます。実際に翻訳成果物を使用する人たちが納得するものをつくることが大事ですから。

他に、新しく進めたいと思われていることはありますか?

現在TMGが全社で発生する翻訳案件のかなりの部分を担当していますが、中外全体の翻訳関連業務が効率化されるような体制づくりも考えていきたいと思っています。それを支えるための新しい技術として、翻訳管理システムも有用ですし、案件管理の面からも何かシステムが必要かと思っています。

今後の要望について

テクノロジーを活用することで解決したい課題や、弊社が提供できるサービスや支援について、ご希望や要望があればお聞かせください。

アスカコーポレーション ソリューション事業部 渡邉 奈生

まずは納期を可能な限り短くしていただくことです。クライアントとしても非常に助かります。また、具体的なアイデアはありませんが、単に納期が短縮されるだけではなく、業務プロセスに付加価値がつけばいいなと思います。細かな話になりますが、翻訳メモリや用語集も人手を介さずに簡便にブラッシュアップやメンテナンスできるようになると良いと思っています。
私どもでは思いつかないような新しいご提案を期待しています。

最後に、治験が始まってから承認されるまでの過程における翻訳の役割について、翻訳者や翻訳業務に携わる方々へのメッセージをいただけますか。

弊社における私たちのグループの仕事そのものがそうですが、医薬品の開発から上市、ファーマコビジランスに至るまで、グローバルで行うには翻訳なしでは前に進みません。やり方は変わっていきますが、みなさん縁の下の力持ちとしてそれぞれの役割を果たしていただきたいと思っています。それが、わたしたちの業界においては、「患者さんに一日も早く薬をお届けする」ということにつながりますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

中外製薬の齋藤様(中央)とASCAメンバーの2人(両サイド)

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